【レポート】第7回 大阪市立大学女性研究者 特別賞・奨励賞[岡村賞]表彰式・記念講演会を開催しました(2020年12月24日)
令和2年12月24日(木) 第7回 大阪市立大学女性研究者 特別賞・奨励賞 [岡村賞] 表彰式・記念講演会 を開催いたしました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、関係者のみの開催となりました。
表彰式では、以下3名の方々が受賞されました。<当日の録画映像はこちら>
~ 第7回大阪市立大学女性研究者 特別賞・奨励賞[岡村賞] 受賞者 ~
■特別賞 | 濱野 佐知子 (理学研究科 数物系専攻 准教授) |
■博士研究員奨励賞 | ローサ・マイタ・パラシオス (理学研究科 研究員/南部陽一郎物理学研究所 特別研究員) |
■大学院生奨励賞 | 磯見 麻衣 (生活科学研究科 居住環境学講座 後期博士課程3年) |
はじめに、池上知子男女共同参画担当副学長から開会の挨拶がありました。
受賞された3名の総評がありました。特別賞を受賞された濱野佐知子先生は、数学分野での先端的テーマに取り組み、国際誌に多くの論文を掲載し、海外でも活発に活動を展開されています。男女共同参画の促進においても多岐にわたり継続的に取り組まれており、今後も女性研究者としてのますます活躍されることを確信しております。博士研究員奨励賞を受賞されたローサ・マイタ・パラシウスさんは、宇宙物理学の最先端の研究に携わり、若くして重要な発見を行うなど、研究面での活躍は高く評価されました。女性の少ない分野でのこうした活躍は、その存在自体が男女共同参画を推進する原動力になると思われ、今後も国際的に活躍することが期待されます。大学院生奨励賞を受賞された磯見麻衣さんは、素材の光沢に関するユニークで興味深い研究に従事し、成果を活発に発信され、特に心理学的なアプローチと工学的アプローチを融合させている点に独創性が感じられ、高く評価されました。また女子高生向けのダイバーシティ推進活動等に貢献し、若手のロールモデル的役割を果たされていることなど、今後も更なる活躍が期待されます。今回応募してくださったすべての皆様、選考にあたられた先生方に改めてお礼を申し上げます。たくさんの応募がある中で、激戦を制して受賞された3名の方々に心から敬意を表し、今後の一層のご活躍を祈念いたします。
次に、受賞者への表彰式が行われ、荒川哲男 大阪市立大学学長より、受賞者の方々に賞状と副賞が授与されました。
続いて、荒川学長からの祝辞がありました。
岡村賞という賞名の由来については、本学の前身である大阪商科大学に昭和22年にはじめての女子学生として入学された岡村千恵子様のご寄附を原資とさせていただいたことから、「岡村賞」と命名され創設されました。女性研究者の活躍が目覚ましく、このたび、この岡村賞に優秀な3名の方々が受賞され力強く感じます。今後、女性研究者にとって、環境を整えて自由に活躍できる場を作っていくべきであるとの言葉がありました。
【受賞者による記念講演会】
■大学院生奨励賞 磯見 麻衣(生活科学研究科 居住環境学講座 後期博士課程3年)
磯見さんの研究テーマは、材料の質感測定および人間の心理評価についての研究です。
人間の心理評価製品や空間の視覚的価値に大きな影響をもつ「色彩・光沢」に着目し、その質感が人に与える影響と、物体の測定方法の開発の両面からアプローチし、光学特性から人間の感覚を予測できるようにする研究に携わっています。研究の過程で、非接触で色彩値と光沢度を測定できる色彩・光沢度測定システムと測定器の開発も行っています。
また、理系女子学生育成を目的とした「日経ウーマノミクスフォーラム2020」の高校生WEB座談会「働きやすい社会とダイバーシティ推進」のファシリテーターとして参加しました。同フォーラム「プレゼンコンテスト決勝大会」の学生・大学院生の部では「異分野融合が作るカラーフィルム」というタイトルで発表し、特別賞を受賞しました。本学のオープンキャンパスでのイベント「理系女子学生による進路相談会」でも、理系女子学生スタッフとして運営側に携わり、来場した中高生や受験生、保護者の方に、理系の魅力を伝える活動を行ってきました。
研究に対する達成感や喜びを、女子高生に伝えるための活動にも積極的に参加され、ダイバーシティ推進活動等に貢献されていることがうかがえました。若手のロールモデル的役割として、今後の活躍が一層期待されます。
■博士研究員奨励賞 ローサ・マイタ・パラシオス(理学研究科 研究員/南部陽一郎物理学研究所 特別研究員)
ローサさんの研究テーマは、「超高・最高エネルギー宇宙線の研究」です。
宇宙を飛び交う高エネルギー放射線=「宇宙線」の研究に携わり、前期博士課程では宇宙線観測装置のデータ収集系とそのデータから、宇宙線の到来方向・エネルギーなどを決定する解析プログラムの開発に取り組まれました。開発した実験装置と解析プログラムは、現在物理学科3回生の授業科目「専門物理学実験」で利用され、本学理学部の教育活動に大きく貢献しました。米国ユタ州に北半球最大の面積700 ㎢を持つ空気シャワー観測装置がある国際共同宇宙線観測実験「Telescope Array実験(TA実験)」に参加し、後期博士課程の研究では1980 年代に求められた最高エネルギー宇宙線空気シャワーの曲面形状に関する経験式を約30年ぶりに更新。そして、これまでの学習と研究の成果を認められ、2020年3月に大阪市立大学より博士(理学)の学位を授与され、2020年4月からは理学研究科研究員/NITEP特別研究員として務めています。
女性研究者比率の特に低い物理分野の女性留学生として、言語の壁や様々な困難を乗り越え、国際的に重要な研究成果を収められました。宇宙を飛び交う高エネルギー放射線を研究され、国際的にも研究成果を収められていることなど、大変スケールが大きい分野で活躍されており印象的でした。
■特別賞 濱野 佐知子(理学研究科 数物系専攻 准教授)
濱野先生の専門分野は数学の中心的分野である「多変数複素関数論」です。
その指導原理である関数が定義される「領域」の形状や性質に関する研究を行ってきました。国内外の多くの研究では「領域」から定まる関数「ベルグマン核」が用いられているが、独自の研究として、ベルグマン核以外の対象である等角不変量の変動を解析し、変分公式の確立や応用などで成果を挙げてきました。2018年から2019年にかけてドイツ、フランス、ロシアで開催された水準の高い研究集会に招聘されました。2016、2017年度には、本学女性研究者支援室の研究力向上専門部会委員を務め、数学分野の女性研究者を招聘した講演会を企画されました。
「第13 回女子中高生のための関西科学塾」では講師として携わり、数学分野の女子学生支援に関わる高大連携事業・地域貢献活動にも積極的に関わってきました。
男女共同参画の促進においても多岐にわたり継続的に取り組まれており、今後も女性研究者としての活躍が期待されます。数学の世界に対する情熱が感じられ、終始 笑顔を絶やさず話されていたのが印象的でした。
最後に、宮野道雄 女性研究者支援室長より、閉会の挨拶がありました。
平成25年度文部科学省補助事業「女性研究者研究活動支援事業(一般型)」及び平成29年度同事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(牽引型)」に選定されてから、女性研究者の比率が徐々に増加(約25名)してきております。優秀な女性研究者が揃っていますが、女性研究者のための環境整備を今後も重ねていくことが課題です。平成26年度から創立された岡村賞(女性研究者表彰制度)の存在は、現役の女性研究者の評価、研鑽に繋がっています。また、3名の受賞者の方が、後に続く若手の研究者のロールモデルとして、今後ますます研鑽されて活躍されることを祈念します。岡村賞の継続にご尽力いただいている教育後援会、関係者の皆様に御礼申し上げます。
第7回大阪市立大学女性研究者 特別賞・奨励賞[岡村賞]表彰式・記念講演会は、盛会のうちに終了しました。
当日の録画映像はこちらをご覧ください。https://www.wlb.osaka-cu.ac.jp/2021/01/18/news_20201224/
◆ダイジェスト映像は2月に公開予定です。
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■お問い合わせ
公立大学法人大阪 大阪市立大学 女性研究者支援室
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tel:06-6605-3661
mail:ocu-support-f(at)ado.osaka-cu.ac.jp(※メール送信時は(at)を@に代えてください)