平成31年1月15日(火)大阪市立大学杉本キャンパス学術情報総合センター1階文化交流室にて、エイミー・ウェント氏(ウィスコンシン大学マディソン校 女性科学・技術リーダーシップ機構(WISELI)ディレクター、電気・コンピューター工学科 教授)を招き、「多様な人事選考を進めるためのワークショップ」を開催しました。

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【ワークショップの様子】

 

【エイミー・ウェント先生】

【エイミー・ウェント氏】

 第1部ではウェント氏より、WISELIについての紹介がなされました。WISELIは、ワークライフバランスに関する調査、ワークショップの開催、補助金プログラムの実施、教材の作成を行っているとのことでした。そして、それらの活動を通じて得られた知見をパンフレットや書籍として出版したり、バイアスを取り除くために有効なワークショップキットを販売したりしていることから、WISELIの取り組みの先進性と周囲の関心の高さがうかがえます。

 第2部では、無意識のバイアスとは何かについて、バイアスの影響を示す研究結果を挙げながらご説明いただき、人事選考において無意識のバイアスを乗り越えるために有効な戦略についてお話しいただきました。採用担当者は、男性名の応募者の方の能力をより高く見積もり、初任給も高く設定する傾向がありました。また、採用に際する推薦書の文面内で「His(彼の)」あるいは「Her(彼女の)」の後に続く言葉を比較した場合、「His(彼の)」の後には「Research(研究)」や「Skills/Abil(能力)」等、研究職での採用に直接結びつきやすい言葉が続いていることが多いのに対し、「Her(彼女の)」の後には「Training(訓練)」や「Teaching(教育)」等、研究上の能力評価には関係の薄い言葉が続くことが多いというデータが出ました。このように女性は能力的に男性に劣っているわけではないにもかかわらず、無意識のバイアスが働いた結果、周囲の人々や女性自身がその能力を過小評価している現状があります。

 ウェント氏はこのような現状を踏まえ、「人事選考において無意識のバイアスの影響を避けるためには、自身の客観性について疑問を持ち、固定観念を引き起こす言葉を使わないよう気を付ける。また、事前に評価基準を確立し、決して評価プロセスを急ぐことなく、各評価者に公平性について説明責任を持たせることが重要」と述べました。

 登用した女性が活躍できる組織にするために、ウィスコンシン大学マディソン校では、テニュアトラックの延長、育児休暇、デュアルキャリアプログラム(パートナーと共にキャリアを積んでいくための制度)、子供に対するケアや補助金へのアクセスの改善、各種トレーニングを実施しています。最後にウェント氏は、「組織全体がジェンダー平等の方向へ向かっていくためには、文献のレビューをし、組織の現状を評価したうえで、性差を表す言葉の排除、様々な種類のリスクを包含する環境の構築、仕事の柔軟性の向上、必要に応じて全ての教職員がテニュアトラックの延長を出来るようにするべき。また現場に応じて対応を柔軟に変えていくことも必要」と指摘され、参加された教員は熱心に聞き入っていました。

 ウェント氏は、1月18日まで滞在し、工学部での「理系学生のためのエンカレッジ教室Part2」「特別講演会」などの講師も務めました。