【レポート】「平成30年度ダイバーシティ研究環境実現シンポジウム」を開催しました(平成30年10月19日)

【会場の様子】
このシンポジウムは、本年が2年目となる文部科学省 科学技術人材育成費補助事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(牽引型)」の一環として開催されました。
科学者から起業家へと転向しバイオベンチャーの世界で大きな成功を遂げた久能先生が、キャリア形成においてポイントとなる考え方やイノベーションに必要な要素などについてお話されました。
また、上位職登用の観点から大阪における全体的な傾向と個別企業の取り組みについて2者からプレゼンテーションを行った後、異なるセクターで意思決定ポジションに就いて活躍する女性にロールモデルとして登壇してもらい、パネルディスカッションを行いました。
工学博士 久能 祐子氏
・S&R財団 代表
・Halcyon 創設者兼議長
・京都大学経営管理大学院特命教授兼総長学事補佐
・株式会社フェニクシー 共同創業者
【講演タイトル】 「世界は広い、人生は長い」
久能先生の‟My journey”として、科学者を目指していた頃から期せずしてバイオテック起業家となった頃、さらにはワシントンでインキュベーター事業を立ち上げられてから現在に至るまでをお話されました。久能先生は、子供の頃は人と話すのが苦手で、人とあまり話さなくても済むと思って研究の道を選んだと言います。世界的にご活躍される今となっては意外に感じられるエピソードですが、その後のキャリアにおいても目の前に訪れる状況に対して自然体で1つ1つの選択を積み重ねて来られたというお話が印象的でした。日米それぞれで創業したバイオベンチャーが上場するまでに成長し、大きな成功を遂げられましたが、そこに至るまでには大きなリスクと背中合わせでありながらも「不思議と怖くなかった」と話す久能先生。その時の心境をふり返ると「(自分が登るべき)山が見えているような感覚があった」ということで、イノベーションが完成する上で鍵となる要素についても分かりやすく説明していただきました。
■質疑応答
久能先生の基調講演に対して、本学の学部生2名から質問がありました。1つめの質問は、進路として海外のスタートアップで働くことを考えているという男子学生から、時代の流れがとても速い現代においてビジネスのリスクコントロールはとても難しいのではないかと考えるが、久能先生はどのようにされているのかという質問でした。2つめは女子学生から、ビジネスに成功した後の引き際について質問がありました。
久能先生から「とても良い質問ですね」というコメントと共に、
*リスクコントロールについて
・時代の流れが速いので、リスクを完全に見通すことは難しい
・過去の経験値がアテにならないこともある
・直感が大切
*引き際について・1つ1つに対して永くなり過ぎないように意識している
・自分がやったほうが上手くいくと思う時もあるが、伸びしろは若い人のほうが大きい
・自分はもっと面白いことを見つけるんだという気持ちで手放す などのお話がありました。
■報告1
大阪商工会議所 人材開発部 研修担当課長 本 奈美氏
「大阪における女性活躍推進の状況 ~管理職登用の観点から~」
はじめに大阪における女性活躍推進の状況として、女性管理職が10%未満の企業は全国平均が81.1%に対して大阪の企業は84.3%であることが報告され、女性の継続就労や管理職登用推進の実現にはまだ課題が残っていることが改めて確認されました。
続いて、大阪商工会議所における女性上位職登用促進の取り組みとして、大阪サクヤヒメ表彰制度や研修・セミナーの実施が紹介されました。
■報告2 積水ハウス株式会社 CSR部長 小谷 美樹氏
「女性社員の上位職登用の取り組み」
同社は意思決定の場に女性を増やし多様な視点で企業の成長を促すため、2020年に女性管理職を200名輩出することを目標に掲げています。その実現に向けた取り組みとして、約2年間のカリキュラムによって実施される「積水ハウス ウィメンズ カレッジ」(管理職候補者研修)や、テレワーク等を活用した柔軟な働き方の推進、育児が昇格に不利にならないような評価制度の構築などが紹介されました。
■パネルディスカッション
<パネリスト>
S&R財団最高経営責任者(CEO)兼理事長 久能 祐子氏
和歌山大学 理事・副学長 呉 海元氏
近畿経済産業局 通商部 国際化調整企画官 内海 美保氏
ゴールデンダンス株式会社 代表取締役 中谷 明子氏
<ファシリテーター>
大阪市立大学 大学運営本部 事務部長 折原 真子氏
【タイトル】 「‟decision maker”としての生き方 ~多様なセクターで活躍する女性を迎えて~」
4つの異なるセクターから意思決定ポジションに就いて活躍される女性をパネラーとして迎え、‟decision maker”としての生き方や働き方についてお話いただきました。ご自身の経験をふり返ってお話いただくと共に、各セクターの女性活躍状況をデータで見ながら、構造的な課題やそれを踏まえたキャリアアップのポイントなどについてそれぞれお話がありました。
■参加者からは、次のような感想をいただきました。
・国際的に活躍された方ならではの価値観・マインドの持ち方に感銘を受けた
・登壇された皆さんが素敵なバックグラウンドを持っているので学ぶことが沢山あった
・とても刺激的な講演で元気をもらった
・現場で活躍されている女性の経験やポリシーを生の声で聞けて良かった