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サポーター紹介 vol.1 山野 奈美

山野奈美
理学研究科
物質分子系専攻
前期博士課程1回生

Q1.まずは、自己紹介をお願い致します!

理学研究科物質分子系専攻前期博士課程1年の山野です。学部生の頃は、理学部物理学科に所属していたのですが、女子はなんとクラスの40人中5人でした。入学時は驚きましたが、少ない分団結も深まったように感じます。研究分野を決める段階では、女子全員がバラバラの分野に進みましたが、今も時々“女子会”を開いて近況報告を行ったりしています。
大学院は講義の数は、学部に比べてかなり少なく、平日は主に研究室で実験やデータ整理、ゼミなどに参加しています。研究は、講義とは違い、自分の手を動かして結果を得ることが重要だと実感しています。まだ誰も知らない何かを明らかにするという研究の楽しさを感じながら、忙しいながらも毎日充実した日々を送っています。休日は、映画館やカフェ巡りを行うなど、かなりきままに過ごしています。

Q2.女性研究者支援室や女性研究者研究活動を知ったきっかけと現在の取り組みについて教えて下さい!

ロール・モデルセミナーの風景

オープンキャンパスリケジョ相談会時の風景

私が女性研究者支援室(以下:支援室)やその活動を知ったのは、研究室の女性指導教官について教えてもらったことがきっかけでした。私自身、将来の進路として研究者を目指すことも考えていたのですが、出産・育児・介護をはじめライフワークと研究を両立できるのか、ということが心配な点としてありました。
そんな中、支援室が主催しているライフ・ワーク・バランスに関するシンポジウムや講演会に参加し、働く女性を支援する制度が、国・地域レベル、また、企業や大学で推進されつつあることを知りました。特に、仕事と子育てを両立する女性の実体験を聞くことは、とても励みになりました。
支援室の取り組みの一環として、現在私は、実際に女性研究者のもとで支援員として活動を行っています。研究者と言っても、実験や研究活動だけが仕事ではありません。研究費の申請、論文執筆、学生の指導や授業の準備など多岐に渡ります。支援員としてサポートに携わることで、大学の研究者の仕事の一部を体験することができ、自身の研究や進路選択において、とても貴重な経験となっています。
その他の活動としては、今年度のオープンキャンパスで支援室が主催する“リケジョ相談会”にスタッフとして参加し、高校生や保護者の方に自身の学生生活や大学での勉強内容などを紹介しました。

Q3.次に研究について伺います!専門分野を志したきっかけは何ですか?

私が理系分野を志した理由は、中学校の理科の授業が好きだったからです。なぜ空は青いのか、なぜ雷の音は光ってから聞こえるまでに時間がかかるのか。身近な例で言えば、IHクッキングヒーターはどうやって物を加熱するのだろう、といったことなど小さいころから感じていた身近な疑問が、自然現象を記述する理論や法則を勉強することで次々に解決され、”そうだったのか”とよく興奮していたのを覚えています。そして、疑問を解決することの楽しさを知りました。高校でも理系クラスに入り、文系科目が苦手だったのもありますが物理と化学ばかり勉強し、先生を捕まえては質問攻めしていました。その頃、エネルギー問題に興味を持ち始め、先進国・途上国に限らず、お金や大型設備がいらない、今までとは全く違うエネルギー源となるものは無いのだろうかと漠然と考え始めました。そこで、大学学部では物理学科に入学しました。大学院では違う視点で理系分野を学んでみたいと思い、思い切って化学系を専攻しました。 まだまだ勉強不足ですが、大学に入り学んだことは、世界は“解らない”ことが多く溢れているということです。だからこそ、探求心は尽きないし、その探求心に日々突き動かされ、一つ一つ確実に“解る”ものに変えていく理系の世界は、とても刺激的です。また、そこに身を置いて研究の面白さや楽しさに触れることができ、本当に幸せだな と思っています。

Q4.これまでの研究と研究者を目指すきっかけ(将来目指しているもの)について教えてください!

私は現在、植物の光合成において重要な役目を担う“カロテノイド”というオレンジ色の色素分子の研究を行っています。光合成は、植物が生体を維持するために、太陽光のエネルギーを化学エネルギーに変換し、水と二酸化炭素からブドウ糖と酸素を作り出す反応です。この時、まさに太陽の光を集めているのが、葉緑体内の機能性タンパク質に結合した数種類のカロテノイド分子です。カロテノイド分子は、余ったエネルギーを散逸させる機能も持ちあわせており、植物が持つ供給エネルギー量を調節できる集光素子のようなものです。
具体的な研究内容として、私は、本来必要なカロテノイドを遺伝子改変により著しく欠損した植物において、代替となって機能するカロテノイドの分子構造を特定し、その光合成能を野生株と比較する実験を行っています。最終的に、植物が獲得した効率的な集光・散逸方法が、カロテノイドのどのような分子構造に依存するのかがわかれば、代替エネルギーとして人間が太陽光の利用を考える上でも役に立つのではないかと考えています。
次に、私が研究者を目指そうと思ったきっかけですが、これはおそらく研究室の指導教員が女性だったことに影響を受けています。指導教員の先生は、現在、理学部・理学研究科の准教授をされていますが、その一方で二児のママでもあります。成果が出るまでに時間が掛かる研究の世界は、男性の方が圧倒的に人数は多く、ライフイベント(結婚・出産・育児など)との両立を考えると、生涯仕事に専念できる時間的にも有利だと考えていました。そのため大学に入学した当初は、専門分野とは関係のない職業に就くしかないだろうな、とぼんやり思っていました。ですが、支援員の取り組みを通じて間近で先生のサポートをしていると、頑張れば子育てしながら好きな研究を続けることができるということを実感しました。今は、先生の背中を見ながら、私も研究者になって、いつの日か自分が携わった研究が誰かの役に立てると嬉しいなと思っています。

Q5.さいごに、現在、どんな研究・活動に取り組んでいますか?

休日はしっかりリフレッシュ!

休日はしっかりリフレッシュ!

現在は、上で述べた研究・活動を継続して行っています。実験で得られた結果は、国内外の研究会や学会で発表しています。自分の研究を発表できると思うと嬉しい反面、どんな評価を受けるのか怖い部分もあります。ですが、学会発表などの学外活動は、違った視点から意見を伺う機会でもあります。行き詰まっていた問題の解決策のヒントが得られたり、自分の研究内容に新たな面白さを発見できたりするので毎回とても楽しみです。ただ理科が好きという理由だけで理系分野を選択した私でしたが、研究活動を通じて自分の手でまだ誰も知らないことを突き詰めていくことは、今まで受けてきたどの授業よりもずっとワクワクします。女性研究者に対する支援制度がもっと広がり、好きなことを一生の職業として選択できる環境が整い、研究者を志す女子学生が増えればいいなと思っています。
女子学生の進路選択においては、理系分野には女子が少ない、といったことから理系を敬遠するところもあるかと思います。でも“理科が好き”という思いがあるなら、次世代の方にも迷わず飛び込んできて欲しいし、後悔することは無いと思います。私たちの取り組みが、次世代の一歩を踏み出すきっかけになれば嬉しいなと思っています。