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スタッフ紹介 vol.1 阿久井 康平

阿久井康平
工学研究科
都市系専攻
後期博士課程2回生

「女性研究者研究活動支援事業における取り組み」と「若手研究者としてのこれまでとこれから」

Q1 まずは、女性研究者支援室での取り組みについてお聞きします!今、女性研究者研究活動支援事業で取り組んでいるものは何ですか!?

女性研究者支援室(以下:支援室)における研究活動支援事業は、女性研究者支援をとおして男女共同参画を推進するものです。支援室では、教育・環境整備、次世代の研究者育成、学内の意識改革、地域への貢献、キャリアパスなどを活動の柱としております。2014年5月より支援室にてコーディネーターとして勤務しており、現在の勤務形態は、研究活動とのバランスを考慮しながら週2日程度となっております。

次世代の研究者となる研究員や大学院生を育成するためには、先導するロールモデル、ワーク・ライフ・バランスに関する諸制度の情報共有、将来ビジョンに沿ったキャリア形成を考える場が重要であると考えております。そんな中、現在取り組んでいる主な内容は、「研究者のワーク・ライフ・バランス等に関する実態調査」の報告書作成、「メンタリング講習会企画」に当たる準備調査、「次世代の研究者育成・啓蒙活動のためのワークショップデザイン研修会企画」がメインとなっています。

Q2 女性研究者研究活動支援事業への思いについて聞かせてください!

ワークショップデザイン企画ミーティングの風景

ワークショップデザイン企画ミーティングの風景

最近、建設業界において、「ドボジョ(土木系女子の略)」という言葉が普及し、女性技術者の活躍が多く見受けられます。私の同期も全国各地で活躍しています。しかし、一方で女性研究者は依然として少ない傾向にあるように見受けられます。

男女共同参画を推進する上で、研究職というフィールドにおいてもその土台づくりを一刻も早く進めることが必要だと考えています。キャリア形成に関して言えば、十人十色さまざまなプランがあると思います。順調に物事が進むときもあれば、当然壁にぶつかる時もあります。特に、壁や悩みに直面した時は、相談できる環境やネットワークの形成が重要になると思います。将来的には、研究者であるとともに教育者として次世代の夢をサポートしながら、キャリア形成の土台づくりに関わっていきたいです。

また、支援室における取り組みは、研究活動との内容は異なりますが、似ているところもあります。例えば、ハード面で言えば統計処理などの分析技術の向上、ソフト面で言えば企画デザイン力や合意形成プロセスといったものは、研究を実施する上でのツールとして大いに役立ちます。逆に今後は、主要業務の一つである「次世代育成関連業務」にこれまでの経験を活かし、新たな切り口から効果・成果をもたらすことができるよう尽力したいです。恩師・同胞がみちしるべを示してくれたように、私自身も次世代とともに考え、議論し、成長し、夢を与えることができるような人物を目指して、取り組んで行きたいと考えています。

Q3 次に、研究について伺います!専門分野を志したきっかけは何ですか!?

小さい頃に触れた美しい風景に魅了されて、将来‘景観づくり’に携わりたいという想いが芽生えました。その景観は私にとって、川、橋梁、建築物そして木々や植物などがトータルで調和したものであり、家族や友達と過ごすライフステージでもありました。

景観という言葉を聞いて、都市部、地方都市、山や海の自然など、それぞれがおもい描くシーンやストーリーが異なると思います。まちの景観を読むということは、場所の記憶やそこをステージとする人々の想いを汲みとる行為だと考えています。それぞれがおもい描く景観のデザインに携わるということ。「景観デザイン」という専門分野を志す上で、あまり迷いはなく、逆にこれしかない!という気持ちでした。

少し硬い話をしますと、特に近年、建築物や土木構造物が溶け合うような‘柔らかな景観’をつくることが求められています。高度成長期以降、都市を構成する建築物と土木構造物の設計は、たて割りで切り離され、経済性や安全性が重要視される一方で、景観への配慮がおろそかになっていると言っても過言ではありません。今日では、その「景観デザイン」の真価が問われています。

大きくこれらの経緯が「景観デザイン」を志すきっかけとなりました。

Q4 これまでの研究と研究者を目指すきっかけについて教えてください!

これまで、学士課程では構造デザインを専攻し、経済性や安全性を前提条件とした構造物設計の基礎知識を学びました。研究内容は「木材と鋼材のハイブリット部材」を提案し、その強度特性を明らかにするものでした。この研究で、橋梁設計に使用する新しい部材の可能性を見出すことができました。

修士課程では景観デザインを専攻し、主に景観デザイン論、都市史およびデザイン史について学びました。研究内容は「戦前大阪の橋梁デザイン思想や手法」に着目し、当時の橋梁デザインに関わった土木技術者や建築家のデザイン思想に焦点を当て、そのデザイン手法を考察しました。当時のデザイン手法は、‘柔らかな景観’を生み出すことに卓越しており、「景観デザイン」の方向性を定めるアプローチ手法や方策について現代的意義を見出しました。

研究を通して地域や自治体で知的好奇心を表現できた経験により、研究者を目指したいという気持ちがより強くなりました。その一方、景観デザインの研究を深めるためには、研究と実践の両方が必要だと考えました。特に、専門分野上、計画・設計力の向上・知識・技能・経験を蓄積する必要性を感じたこともあり、修士課程を修了したあと、建設コンサルタントに入社しました。入社後は、長大橋梁や中小橋梁の計画・設計、文化的景観地区の計画・設計をはじめ東日本大震災による被災地域の復興都市計画・設計などの業務に主担当で携わりました。5年間の実務経験を経て、2013年4月より本学の博士過程に在籍しています。

Q5 さいごに、現在、どんな研究・活動に取り組んでいますか!?

研究室での研究風景

研究室での研究風景

現在は「全国の近代都市形成と橋梁デザイン手法」に関する研究を行っています。研究内容は、全国の近代都市形成過程における橋梁の位置づけやデザイン手法を明らかにし、都市ごとの特性を取りまとめようとするものです。普段は、両手にかかえきれないほどの歴史文献・図面・写真を手に、研究に奮闘しています。研究室は、必然的に男女問わず夢に満ちあふれた学生が集まる場になっており、活気にあふれ、切磋琢磨する環境が整っています。

研究と並行して設計活動も実践しています。昨年度は、研究室のメンバーが一丸となり、日本建築学会近畿支部都市計画部会設計競技で「最優秀賞」、土木学会景観開花デザイン競技で「特別賞」を受賞することができました。研究と実践を論として構築することが今の課題でもあります。まちの景観を読み、 ‘景観づくり’に携わることができるということ。これほど楽しく、歓びに満ちたものはないと思っています。