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学生スタッフ紹介 vol.1 澤田 彩

澤田彩
経営学研究科
グローバルビジネス専攻
後期博士課程2回生

 

「女性研究者研究活動支援事業における取り組み」と「若手研究者としてのこれまでとこれから」

Q1 まずは、女性研究者支援室での取り組みについてお聞きします!今、女性研究者研究活動支援事業に携わるようになったきっかけと現在の取り組みについて教えてください。

私が本学の女性研究者支援室(以下:支援室)の存在を知ったきっかけは、2013年12月に支援室主催で開催された研究者交流会に参加したことでした。そこで、子育てと研究を両立されている京都大学の山肩洋子先生のお話を聞き、初めて自身のワーク・ライフ・バランスを具体的に考えるための具体的な参考例が得られる良い機会となったのと同時に、支援室の取り組みについてたいへん興味を持ちました。そこで、女性研究者研究活動支援事業(以下:支援事業)に興味がある旨を支援室スタッフに伝えたところ、良かったら事業運営のお手伝いをしてもらえないかとお誘いいただきました。このような経緯で、私は学生スタッフとして2014年2月から勤務することになりました。自分の研究活動と支援室でのタスクの両方を考慮しつつ、柔軟に勤務時間を設定させていただいています。業務頻度は平均すると週2日程度です。

現在、私はワークショップ企画運営を担当させていただいています。私は学部生の時に学部を超えた学生同士で自主的に学ぶ社会科学研究サークルに所属していました。そこで4年間、研究会や合宿、フィールドワークなどの企画運営を通じ、自然とどうやって学びを誘発するかについて考え、実践してきました。ワークショップ企画運営にはそこでの経験が生かせていると感じています。学びを誘発する場をデザインする力は、教育者でもある大学教員にとって必須の能力ですので、私は支援室での業務を通じてさらにスキルアップしていきたいと思っています。これまでの自分の経験を生かしながら、自分自身の課題でもある女性研究者の研究環境改善に取り組める上、自分のキャリアアップにもつなげられるという点で、女性研究者支援室での業務にはとてもやりがいを感じています。

Q2 女性研究者研究活動支援事業への思いについて聞かせてください!

ロール・モデルセミナーの風景

ロール・モデルセミナーの風景

私が物心ついたときには既に「女性の社会進出」や「男女共同参画社会」などという言葉はごく一般的なものでした。実際、自分が小中高大とこれまで受けてきた教育カリキュラムの中で、女性であることを理由として何か不利益を被ったことは一度もなく、男子と共に机を並べて同じ科目を学んできました。そのため、研究と育児の両立に関して大きな不安を感じることもなく、大学を卒業したら結婚し、子育てしながら大学院で学ぶことを決めて実行しました。しかし、自分が実際に妊娠・出産・育児を経験してみると、育児と研究の両立の困難さを痛感しました。産前はたびたび切迫流産や切迫早産と診断されて医師から安静を命じられ、ゼミや授業を欠席しなければならないこともありました。また、産後は慣れない子供の世話に昼夜関係問わず追われます。ゼミや授業のある日は実家の協力を得て通学しましたが、片道1時間半もかかるため、ゼミや授業に出席する以外の研究活動を学外で行う余裕は有りませんでした。長男が生後7カ月になる2012年4月から保育園を利用し始めましたが、集団生活のため病気にかかることが多く、頻繁に保育園を休みました。それでもなんとか周囲の協力のおかげで休学することなく前期博士課程を修了し、後期博士課程への入学試験もパスすることが出来ました。幸い私は主人や実家の協力を得ることが出来たので、これまで研究を続けることが出来ましたが、個人の環境に全面的に依存した形では研究職への女性進出は十分に進まないだろうと思うようになりました。

妊娠・出産・育児は、当事者の女性だけの努力ではどうにもならない要素がたくさんあります。(おそらく介護もそうでしょう。)どんなに母親が気を付けていても切迫早産や切迫流産は起こり得ますし、そういったものがなくても初めての妊娠・出産・育児には常に不安が付きまといます。私は全くと言っていいほど妊娠・出産・育児に関して知識がなかったので、インターネットサイトや雑誌をよく閲覧していました。しかし、私に本当に必要だった情報は、研究と育児の両立はどうすればよいのかということです。当然巷にあふれる育児関連情報の中に子育てしている研究者の姿などほとんど出てきません。大学に週1~2回しか行けなかった事情も相まって、自分の中で母親であることと研究者の卵であることが分断されてしまい、研究と育児を両立するイメージを持つことが全く出来ませんでした。研究職に携わる女性は一般的な会社勤めの方々より孤独になりがちだと実感しています。そもそも、研究職における女性比率は男性に比べて圧倒的に小さく、研究と育児を両立しているロールモデルの絶対数が少ない上、同じ大学に勤めていても研究科を超えた交流はほとんど皆無です。そのため自身の将来のワーク・ライフ・バランスを考える機会がなかなかありません。私は自分の経験から、研究職への女性進出を進めるためには、研究機関運営に携わるすべての人々に対する意識啓発と専門領域を超えたネットワークづくりが重要だと考えるようになりました。

私は本学支援室で学生や職員、また大学外の様々な人々とのネットワークを構築し、女性研究者を取り巻く環境改善をすると同時に、将来の女性研究者を育む土壌づくりをしたいと考えています。このような意味で、支援事業の対象者は決して女性研究者だけではなく、女性研究者を取り巻くすべての人々であると認識しています。支援室で勤務していると、様々な方々とのつながりを持つことが出来、自分にとって大変良い刺激を受けます。ここでの経験も、自分が持つ強みとして今後生かしていけるよう、精一杯取り組んでいきたいと考えています。

Q3 次に、研究について伺います!専門分野を志したきっかけは何ですか!?

私は学部生の時に社会科学研究サークル学生ゼミナールに所属していました。様々な学部のサークル員と共に4年間、様々な社会問題研究に取り組んだり、他大学との研究交流合宿の企画運営を行ったりしてきました。このような4年間の活動の結果、経済が人間のあらゆる活動の土台となっていることを知りました。そして本来人々をより豊かにするための経済が、逆に人々の生命を脅かす諸問題(貧困・格差問題や環境問題など)を生んでいる原因にもなっていることに問題意識を持つようになりました。

そこで、私はこのような問題自体に焦点を当てた研究についての文献を読んでみることにしました。すると、問題の原因であるはずの経済自体の分析が不十分なものが多く、問題解決手法も対症療法的なものにとどまっているように感じました。

このような問題意識のもと、私は経済が人間の生命を脅かす諸問題の大きな要因であることを念頭に置きつつ、研究の主眼を経済(産業)の動きに置き、そこから課題解決の糸口を考えたいと思うようになりました。

Q4 これまでの研究と研究者を目指すきっかけについて教えてください!

4回生の夏休みに、フィールドワークでもんじゅと美浜原発を訪れたことを直接の契機として、安全性に問題のある原子力発電に依存している日本経済に対して問題意識を持ちました。そこで卒業論文において自然エネルギー産業代表の太陽電池・リチウムイオン電池産業と原子力発電産業のサプライヤーシステム分析を行い、前者の社会的分業構造の広がりが後者に比べて大きいことを理由として、環境保全のためだけでなく、経済波及効果の面から見ても前者の産業を推進するべきであるという主張を行いました。2011年1月にこの論文を大学に提出したのですが、その2か月後に東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故が発生し、その甚大な被害状況を目の当たりにしたことで、自身の卒業論文での問題意識をより深堀りしていこうと決めました。

前期博士課程では太陽光発電システム関連産業に焦点を当て、日本、ドイツ、アメリカの産業構造比較分析を行いました。太陽光発電の分野の研究として、環境論や政策論を切り口としたものは多く見られますが、産業論を切り口とした研究はあまり見られません。関連する研究を見ると、環境保全のために太陽光発電を推進するべきだとか、そのためにドイツのような政策を日本も導入するべきだという主張が散見されます。しかし私は、普及を担う関連産業の構造上の違いや産業を取り巻く環境の違いを無視した形で政策だけ輸入しても期待した効果を得ることはできないという考えから、修士論文ではこれらを切り口に太陽光発電システム関連産業の産業構造を明らかにしました。

これまでの活動を通じて、自分の問題意識の解消と社会への還元を行うためには研究者になるしか道はないと考えるようになりました。将来的にはシンクタンク研究員ではなく大学教員になりたいと希望しています。自分の研究を進める傍ら、後進の育成や研究環境改善活動にも従事しやすいと考えるからです。そのような多様な活動を通じて社会の発展に直接的間接的に貢献していきたいと考えています。

Q5 さいごに、現在、どんな研究・活動に取り組んでいますか!?

ワークショップ活動時の風景

ワークショップ活動時の風景

現在は、修士論文と同じ太陽光発電システム関連産業を対象として、さらに中身を発展させた博士論文を完成させることを目標にして、研究に取り組んでいます。「太陽光発電システム関連産業における市場の質的相違」をテーマにした1本目の投稿論文が間もなく完成するところです。また、同時並行でその後の論文のための資料収集や分析も行っています。

研究手法はテキストベースの情報をメインに取り扱っていますが、必要に応じて統計的手法も取り入れています。産業論は研究に必要な知識の範囲が広いのが特徴です。私のテーマである太陽光発電システム関連産業に関していえば、太陽光発電システムを構成する各部材の動作や電気回路の仕組み、各部材の生産方法、当該産業の供給と需要の各構造、関係企業の個別データ、各国の電力供給体制と各関連法律、各国の再生可能エネルギー関連政策などを事前知識として蓄える必要があります。その上で関連する先行研究を読み、さらに実際現場で働く様々な立場の方々からの聞き取り調査結果を踏まえて論文を書いています。

読む文献は、経済分野のみならず各国の法律や物理学の本などありとあらゆる分野に及びますが、飽きっぽい私の性格にはピッタリの研究スタイルだと感じています。様々な分野の本を読むことで新たな発見もたくさんありますし、自分の世界観も広がります。欧州各国の法律やその形成過程に関する海外の論文を読んでいると、日欧間の政策形成過程の違いがたいへん興味深く、比較政治学への興味も出てきました。修了後の研究の方向性は未知数ですが、「本来人々をより豊かにするための経済が人間の生命を脅かす諸問題の大きな要因となっており、これをなんとかしたい」という問題意識を常に心に留め置きつつ、様々な活動に精力的に取り組んでいきたいと考えています。