岡村賞について
※開催のお知らせはこちら

071

 令和元年12月25日(水)  第6回 大阪市立大学 女性研究者特別賞・奨励賞 [岡村賞] 表彰式・記念講演会 を開催いたしました。当日は約60名の方々に参加いただき、大変盛況な会となりました。表彰式では、以下3名の方々が受賞されました。

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
~ 第6回大阪市立大学 女性研究者特別賞・奨励賞「岡村賞」 受賞者 ~

    ■特別賞  鍋島 美奈子(工学研究科 都市系専攻 教授)

    ■特別賞  岩崎 昌子(理学研究科 数物系専攻 准教授、南部陽一郎物理学研究所兼担)

    ■大学院生奨励賞  辻 多重子(生活科学研究科 食・健康科学講座 後期博士課程3年)

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

★IMG_6107 (2)

 はじめに、池上知子男女共同参画担当副学長から開会の挨拶がありました。
 本学は、平成29年度文部科学省補助事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(牽引型)」に採択され、本年で3年目を迎えます。本事業は、共同実施機関の大阪教育大学、和歌山大学、積水ハウス株式会社と連携して、女性研究者のワーク・ライフ・バランス支援のための環境整備、研究力向上、上位職への積極登用の取り組みを推進するものあり、また、大学と企業の連携によるシナジー効果を目指すものです。この「岡村賞」はその活動の一環として行われているものですが、前回の文部科学省の補助事業の際に創設され、今年で6年目となります。今年度も多数の応募があり、優れた女性研究者の発掘の場としても定着してきています。ここで、岡村賞の継続にあたり、教育後援会に多大な協力をいただいていることに、お礼申し上げます。この表彰制度を通して、女性研究者の活躍を讃えるとともに、女性研究者育成やワーク・ライフ・バランスの環境整備の重要性を内外に発信し、社会貢献に寄与することを祈念し、開会の挨拶といたします。


次に、受賞者への表彰式が行われ、荒川哲男 大阪市立大学学長より、受賞者の方々に賞状と副賞が授与されました。

 続いて荒川学長からの祝辞がありました。「岡村賞」という賞名の由来については、本学の前身である大阪商科大学に昭和22年にはじめての女子学生として入学された岡村 千恵子様のご寄附を原資とさせていただいたことから、このように命名され、創設されたことが紹介されました。受賞された皆さんはこれをステップにさらに大きく飛躍していただきたい、また女性研究者・学生の皆さんには受賞された研究者の後に続き、大阪市立大学の発展に寄与していただきたい、との言葉がありました。


 

  【受賞者による記念講演会】

★IMG_6160 (2)

■大学院生奨励賞 辻 多重子(生活科学研究科 食・健康科学講座 後期博士課程3年)

 辻さんは、現在、大学院生として「在宅医療・介護における持続可能な栄養管理体制の構築」を目指して研究に取り組んでいます。管理栄養士養成課程を有する大学を卒業し、国家試験に合格後、大学病院の管理栄養士・民間の医療食品販売員として勤務する中で、我が国の在宅医療・介護における栄養管理体制がまだまだ未発展だと痛感し、この課題を科学的に解析して効果的な解決策を探索したいと思い、2013年4月に社会人大学院生として生活科学研究科に入学しました。その後、後期博士課程に進んでから2度の出産というライフイベントを経ながらも、現在は長期履修生として学業を続けています。
 キャリア形成には管理栄養士であることが軸になったと語る辻さんは、多職種との共同の取り組みの経験を糧として研究を続け、そのテーマは社会人経験の中で日々疑問に感じたことを具現化したものです。辻さんの活動の拠点は西宮市の社会福祉事業団の訪問看護センターで、そこのスタッフとの共同研究として、食事の多様性に特化した食事指導の効果を調査しました。研究の際、評価方法の決定にあたって、「非侵襲的かつ短時間で実施できるという『実現可能性』に拘った」という辻さんの言葉に、介護される人と現場で働くスタッフに対する心遣いと、妥協することなく研究に取り組む真摯な姿勢がうかがえました。


■特別賞 岩崎 昌子(理学研究科 数物系専攻 准教授、南部陽一郎物理学研究所兼担)岩崎先生1

 岩崎先生の研究テーマは、「加速器実験による素粒子物理学の研究」です。素粒子物理学とは、「私達の世界は何で作られ、どんな法則性にしたがっているのか?」を研究する学問で、加速器とは、高エネルギーに加速した粒子を衝突させて人工的に素粒子を作り出す装置のことです。岩崎先生は、アメリカでの加速器実験への参画を皮切りに、帰国後も数々の加速器実験のプロジェクトに参加し、加速器の建設と、それを用いた実験に関わってきました。現在は本学で、人類のまだ知らない物理法則の探索を目指す国際共同実験である「Belle II 実験」に携わっています。また、物理学実験における機械(深層)学習の適用研究においても実績を上げています。
 東京大学と茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構(KEK)在籍時には、先生の提案が採択され、育児支援室が設置されました。また、KEK在籍時に研究拠点としていた加速器大電源棟内に女性用トイレがなかったため、設置を要望し認可されました。加速器を用いて宇宙創成の謎に迫るという壮大な実験に邁進する中、様々なライフイベントを経ながら男女共同参画にも積極的に取り組んでこられた先生のお話は、大変スケールが大きく印象的でした。


  ■特別賞 鍋島 美奈子(工学研究科 都市系専攻 教授)

 鍋島先生の専門分野は「建築・都市の熱エネルギー設備」です。先生は、准教授時代の2013年から女性研究者支援室の活動に関わってきたことや、2018年にウィスコンシン大学のWISELIを訪問し交流を深めた経験等をキャリアのステップアップにつなげてきました。また、ウィスコンシン大学で、ものづくりの場Makerspaceを視察してその素晴らしさを実感したことをきっかけに、本学の学生たちにも、ものづくりの貴重な体験をしてもらいたいとの思いから、ウィスコンシン大学での研修プログラムを計画し、2019年夏に実現させました。
 研究活動の中で、鍋島先生が特に注目しているのは都市の暑熱化です。今回は、研究実績の一つとして、温泉地域で熱源水ネットワークを構築する技術の研究開発についての話がありました。日本の温泉地域の殆どの事例では建物単体での熱利用にとどまるという現実を改善すべく、温泉熱を利用してヒートポンプ給湯器の熱源とし、余ったらネットワークを通じて足りない施設に供給するというシステムを考案し、システムシミュレーションの結果、省エネの効果を確認できました。
 今後の抱負は、都市系専攻ならではの研究スタイルでシンクタンクとなって地域貢献していくこと、世界で活躍できる人材を育てていくこと、工学部・工学研究科の女子学生及び女性研究者を増やしていくことです。特に、既に立ち上げている「リケジョ応援サイト」(工学研究科のホームページからリンクありhttps://rikejo.eng.osaka-cu.ac.jp/ )を今後とも発展させていくことが自らのライフワークだと語る鍋島先生の言葉から、ロールモデルとして理系女子学生の育成に尽力しようとする熱い思いが伝わってきました。


 ★IMG_6235最後に、宮野道雄 女性研究者支援室長より、閉会の挨拶がありました。

 特別賞を受賞された鍋島美奈子先生は、これまで女性研究者支援室の運営に非常に尽力され、男女共同参画において活躍されています。研究テーマも都市のエネルギーという時にかなったもので、産学連携にも熱心に取り組んでこられ、様々な場面で大変活躍なさっています。
 同じく、特別賞を受賞された岩崎昌子先生は、世界的な業績が数多くあり、この分野のパイオニアとして国際的な研究に関わっておられます。ライフイベントを経験する中、研究と子育てを両立してこられました。
 辻さんも、また、ライフイベントを中断することなく研究を続け、実践の中からテーマを見つけて熱心に取り組んでおられます。
 毎年卓越した方の応募が多く選考に苦慮していますが、本日の受賞者の発表から、今回の選考が適切であったことを納得していただけたことと思います。受賞者の方々には、今後も後輩のロールモデルとして益々ご活躍いただきたいと願います。

 

 第6回大阪市立大学 女性研究者特別賞・奨励賞「岡村賞」 表彰式・記念講演会は、盛会のうちに終了しました。

記念撮影1

【記念撮影】

◆YouTube動画は2月掲載予定です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
■お問い合わせ
 公立大学法人 大阪市立大学 女性研究者支援室
 〒558-8585 大阪市住吉区杉本3-3-138
 tel:06-6605-3661
 mail:ocu-support-f(at)ado.osaka-cu.ac.jp(※メール送信時は(at)を@に代えてください)