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Vol.6 中臺(鹿毛)枝里子先生

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Profile

2004年 東京大学薬学系研究科博士課程修了。博士(薬学)。三共株式会社(現・第一三共株式会社)研究員、2007年東京女子医科大学医学部助教(2012年より講師)を経て、2014年より現職。生活科学研究科兼任。

1.研究との出会

虫愛づるリケジョ

子どもの頃から、動物が大好きでした。野いちごを食べ、バッタを追いかけ、アリの観察をし、家では手乗り文鳥を溺愛していました。野生の食虫植物を山からとってきて庭に植えたりもしました。父も母も理系でしたから、深く考えず高校で理系を選択しました。大学に入るときには、理系学部の中でも生物系かなという感じで、女子なので手に職系の資格が取れる方がというよくある理由と、医者としてやっていく自信はないという消去法で薬学部を選びました。入学した九州大学薬学部は男女の比率のバランスもよく、面白い人達とも沢山出会い、とても楽しく過ごしました。テニスサークルでの活動も盛んで、でも主にお酒を飲んでおりました。4年次の研究室配属では、その研究室を主宰されておりました教授の講義で聴いたセントラルドグマ(DNAの情報が、RNAを介して、タンパク質に一方向に伝えられる)に感銘を受け、実は厳しいことで有名なところに入ってしまいました。薬剤師になるという志をもたない不届き者だったので、4年生では実務実習にも行かず実験していました。卒業時に受ける薬剤師国家試験には合格したものの、登録申請するのを怠けていたため登録が2年後になってしまい、履歴書を書くたびに後悔する羽目になりました。

ミツバチから線虫C.elegans

大学院進学の間際になって教授が東大へ赴任されるということで、九大に籍を置かせて頂きながら、委託研究生として東大で研究させて頂くことになりました。そこで当時助教授でいらした先生がミツバチの脳の研究をされており、現在の研究に繋がるテーマに出会いました。私はミツバチ脳のキノコ体(感覚情報処理に重要な脳部位)において選択的に発現する遺伝子のクローニングというテーマを頂き、これが転写因子であることを明らかにしました。ミツバチは賢く美しくとても魅力的な生物なのですが、遺伝子レベルでの研究を行うには向いておらず、それならとモデル動物である線虫C.elegansを用いることを思い立ち、東大で線虫を用いて先進的な研究をされているいくつかの研究室にお世話になりながら研究を開始しました。博士課程への進学は少し迷いましたが、もともと進学するつもりでしたし、研究室の先輩、同輩が男女問わず進学していたことから、比較的自然な成り行きでした。研究は大変面白く日々熱中していたのですが、なかなか思ったような結果はついてきませんでした。しかし研究テーマを一緒に行ってくれることになった後輩が、2年くらいたったある日突然目の覚めるような発見をし、その後研究が思わぬ方向に進んだため、私は運良く学位を取得し、インパクトの高い研究成果発表をすることができました。

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「脇道から別の山へ」

前後して、製薬会社への就職を決めておりましたので、やや後ろ髪を引かれる思いで企業の研究員となりました。製薬企業研究に携わってみて、アカデミア研究と異なる点がいくつかあると感じました。お世話になった会社の大先輩がおっしゃったのは、企業研究では、登ると決めた山に登らないといけない、アカデミア研究では脇道にそれてしまって別の山に登ってしまうこともある、ということでした。企業における創薬研究から勉強できたことは多く、2年目には社内結婚をしたため、私の人生には大きなプラスの影響があったのですが、私自身は企業のためにあまり役に立てませんでした。

その後、縁あって東京女子医科大学医学部にて助教として採用して頂きました。7年間の在籍中、様々な生命現象について、線虫分子遺伝学にどっぷりと浸かって研究を進めました。現在も線虫C.elegansを用いた遺伝学的・神経科学的な研究を続けています。6年目に出産してからは研究に割く時間が大幅に減ってしまいましたが、同僚や周辺に子育ての先輩である女性研究者が多くいましたし、主宰教授は大変ご理解があり温かくサポートして下さいました。私がつくづく恵まれているのかもしれませんが、今お世話になっている先生もいつも子どものことを気にかけて下さいます。本学のテニュアトラック教員の選考面接は、子どもが7ヶ月のときに受けました。面接の日に学内保育園の見学をさせて頂き、安心して仕事ができそうだと面接もまだ受けていないのに喜びました。無事採用され、子どもとともに大学に通う毎日です。

2.ほっとするとき・こと・ものは?

子どもと過ごす時間

子どもが生まれる前は、休日は友人とテニスをしたり、一人で買い物に出かけたりしていました。出産後は今に至るまで(2歳と少し)、とにかく子どもと過ごしています。息抜きであるような息抜きでないような、でも間違いなく一番大切な時間です。公園に遊びに行ったり、車や電車を見に行ったり、家の中でおもちゃ遊びをしたり、絵本を読んだり。最近お昼寝をあまりしなくなってしまったのですが、運良く寝てくれたら、その間に身の回りのことやネットショッピングをしています。あとは韓流時代劇の再放送にハマっています。好きな食べ物は、子どもの頃からスイカ→ういろう(山口県産)→焼肉→水茄子のぬか漬け(ごく浅く漬かったもの)と嗜好が変遷してきましたが、今一番好きなのはブリしゃぶです。ブリの刺身用ブロックを見つけたら必ず買ってきて野菜と一緒にお出汁にしゃぶしゃぶして食べます。でも今の時期はもう売っていないんですよね。

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3.女性研究者のメッセージ

たくさんの恩を次の世代へ

今回インタビューを受けるにあたり、いろいろと自分の過去を振り返ってみましたが、本当に至らぬ点ばかりで生意気で、先生や上司の方々からは沢山のを受けてきましたのに、お返ししたのは迷惑のほうが多かったように思います。それにも関わらず今も随所で応援して下さっていることを考えると、自分も学生さんに同じ気持ちで接して、受けたを次の世代に引き継いでいかなければならないなと思います。ただ今出会う学生さんは私と違ってよく出来た人のほうが多いのですが。自身が男女の違いをあまり意識せずにきたため、またそういられる環境にいたため、女性研究者や女子学生の方々にとりたててどうこうとアドバイスはできないのですが、私のような者でも家庭を持ち、研究も続けております。歴代の女性研究者達の努力や社会情勢、価値観の変化等により、今は様々な道を選びやすくなっていると思います。皆さんにはさらなる可能性が広がっているのではないでしょうか。